昨日は調香クラスのるいぶさんにお借りした「HANNIBAL」のDVDをみていました。
去年BAR十誡さんで開催させていただいた「映画の香り調香WS」で、
香りとして表現してみたい作品として取り上げてくださった時、
下調べのためにご参加者さまの選んだ映像作品の予告編を全部みてみようと試し見したところ…
美しいけれど、超っ絶に恐ろしいサイコスリラーな映像に度肝を抜かされて、
これは一生見るまいと思っていました…笑
が、彼女からのおすすめもあり、はじめてちゃんと観てみることに!
恐ろしすぎて、寝る前家の廊下を歩くことさえ怖かったですが(笑)、
美食家で天才的な、精神科医ハンニバル・レクター&FBI捜査官
対 凶悪犯罪者の繰り広げる世界観が物凄くもひき込まれる作品で、
両手で目を覆いながらも少しづつ見させていただいています。
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美しいのは映像だけでなく作品のサブタイトルも!
アペリティフ(食前酒)、アミューズ・ブーシュ(前菜)、ポタージュ、ソルベ(シャーベット)など、フランス料理のコースの名前がサブタイトルになっているのもおしゃれです。
そんなサブタイトル「コキーユ(貝殻型のグラタン)」第5話には、
香水にまつわるシーンが登場します。
FBI行動科学課のヘッド ジャック・クロフォードとその妻・ベラが、
ハンニバル・レクターのディナーに招待されるシーン。
冷たいフォアグラと温かいイチジクのコントラストが絶妙だ…とジャックが語る中、
レクターは、ワインを注ぎながらベラのつけているある香水に気づきます。
「稲妻が光ったあとの地上の香り…ジャールか?」
と問います。
NATOの職員だった知的な美しい黒人の妻
そんな女性にピッタリの香り…
どんな香りか想像するだけでもワクワクしますね!
ジャールという香水は今まで聞いたことがないので
(もしかしたらアメリカ?フランス?にはあるのかもしれませんが…)
ここは、「稲妻が光ったあとの地上の香り」というワードから
実際にどんな香りだったか脳内で組み立ててみたいと思います!
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ここから先は私の勝手な想像ですが、
稲妻が光ったあと=オゾンの香りが効いている香水なのでは、と。
雷雨の日には特別な匂い・オゾンが発生する、
という話をご存知でしょうか?
オゾンは、ドイツ・スイスの化学者であるクリスチアン・シェーンバインによって1840年に発見されました。
彼は雷雨の中でオゾンが現れることに注目し、
そしてその奇妙なにおいからギリシア語で【臭い】を意味する Ozo, Ozein から Ozon と名付けました。
オゾン (ozone)とは、3つの酸素原子からなる酸素の同素体です。
腐食性が高く、生臭く特徴的な刺激臭を持つ有毒物質で、大気中にもごく低い濃度で存在しています。
それにしてもなぜ雷雨の日に発生するかなのですが、
オゾンは高圧のところで発生しやすいという特徴があります。
普段から大気中に存在するのですが、雷雨の日は積乱雲の下に小規模な高気圧が発生するため、とくにふしぎなあの匂いを感じやすくなります。
そして実はオゾンには色があり、常温常圧では薄青色の気体であり、
-111.9 ℃ で紺色の液体となり、-197.2 ℃ で濃紫色の固体となるそうです。
色があるのもなんだか不思議ですよね…!
でも綺麗なだけでなく、フッ素に次ぐ強い酸化力を持つため、
高濃度では猛毒なので要注意です。
ちなみにその匂いはといえば、例えてよく言われるのは、
レーザープリンタや、ホテルの消臭をするため圧力洗浄器などを使ったあとの部屋のにおい、プラズマクラスター発生器のにおい、漂白ハイターのにおい…
なんともいえない、無臭に近いのだけれど厚みのある静電気を一気に鼻に吸い込んだ…ような不思議なにおいです。
香水にもオゾン系というジャンルがあります。
上記のような厚みのある空気のようなクリーンな雰囲気の香り、
そして瓜っぽい雰囲気の香りのことをいいます。
オゾン系フレグランスについては、長くなりそうなので詳しくはまた今度!
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このシーンの前後、ジャックとベラの関係が不協和音となっていくことから、
なんともいえない二人のひんやりとした空気感をこの「稲妻が光ったあとの地上の香り」
として作品の監督さんが選んでいたのならすごいな…と妄想してしまいました。
あなたも、映画や映像に出てくる香り、ぜひ想像しながらご覧になってみてくださいね。
作品の新しい魅力が垣間見えてくるかもしれませんよ*