【文章で読む】イタリアで感じた香りの記憶

Podcast(WEBラジオ)の聴き方がわからないです〜、とよくお問合せをいただくので、

番組でお話してさせていただいた内容を文章に書き起こしました。

ぜひ、ラジオ本編とあわせてお楽しみください♪

 

こんにちは、調香師/ブランディング・ディレクターのchiyoです。

 

とってもおひさしぶりになってしまいましたね!

 

そうですね、本当お久しぶりですね。元気にされてらっしゃいましたか?

 

はい、今はとっても元気です! 実は先月イタリアに行っていたんですけど、向こうで風邪をこじらせてしまって、1ヶ月近く声がガラガラになってしまって大変でした。

 

ね、何度か千代さんとはお会いしてましたけど、けっこう大変そうでしたもんね汗

 

はい、ご心配おかけしました!でもね、やっと復活したので、今日からまた色々香りについてのお話をしていきたいと思います。藤谷さん、そしてリスナーの皆様、今日からまたどうぞよろしくお願いします〜。

 

はい、よろしくお願いします〜!

ところで、イタリアでは色々な香りを見てこられたとか?

 

はい、日本で目にするものとは違ったタイプの香りにもたくさん触れてきましたよ!

 

ミラノ、ヴェネツィア、フィレンツェ、ローマと4都市を回られたそうですが…、とくに印象に残った街ってありますか?

 

はい、個人的に一番印象的だった街はフィレンツェですね。

イタリアの古都、フィレンツェ。

中世の街並みがそのままに残る世界遺産でもあるこの都市は、

ルネッサンス発祥の地、メディチ家の栄華を伝える街としても知られています。

 

ちなみにルネサンスとは「復活」「再生」という意味があるんですよね。

日本では文芸復興と訳されることが多いですけど、文芸だけでなくギリシア、ローマ時代の様々な文化が復興して、たくさんの芸術が花開いた時代なんですよね。

 

そう、なので街そのものがアートというか、

歩いているだけで刺激をもらえるような街でしたね。

 

中でも、教会がとても印象的だったとか?

 

はい、偶然訪れたサンタマリアノヴェッラ教会が一番印象的でした。

興味深いことがあったので少し歴史を紐解いていきますね。

 

はい、お願いします。

 

1221年、フィレンツェにやってきた12人のドメニコ会の修道士たちは、サンタ・マリア・デッレ・ヴィーニェ教会(ぶどう畑の聖母マリア教会)という小さな教会を入手したそうです。当時この地は市壁の外に位置していて、教会の名前が意味する通り、この地域はもともと耕作地だったそうです。

そこをより新しく大きな教会に改築したことでサンタ・マリア・ノヴェッラ(新しい聖母教会)という名に変わったそうです。

 

なるほど、もとはぶどう畑だったんですね。

そういえば教会の修道院って、薬草を育てていたりっていうイメージもありますよね。

 

実はキリスト教全盛の当時、高度な知的活動のかなりの部分は修道院で行われていて、場所によっては学問的研究が盛んなところもあったそうです。

労働を尊び共同生活に必要なさまざまなことを修道士らが自力で行うことになっていることも多く、病気の治療法の研究も行われ、修道院の庭では薬用植物が育てられ研究も行われていたんだそうです。

 

だから薬草や、薬草をお酒に溶かし込んだリキュールも修道院と関連が深いんですね。

 

そう、香水の原料になる香料植物も修道院で育てられていたことも多く、

このサンタ・マリア・ノヴェッラ教会も、サンタマリアノヴェッラ薬局という「世界最古の薬局」と呼ばれる有名な薬局をとなりの敷地に持っています。

 

サンタ・マリア・ノヴェッラって、日本にもありますよね?伊勢丹とかに入ってるクラシカルな感じのブランドだと思っていたけど、そんな深い歴史があったんですね。

 

そう、そんな歴史があると思うと感慨深いですよね。

 

ちなみにそんな教会や修道院も多く持つフィレンツェ。

そのフィレンツェのシンボルといわれる花がアイリスです。

 

アイリスって日本語だと、アヤメですか?

 

そう、アヤメ。シンボル自体は正式にはアヤメの花を様式化したデザインで

フルール・ド・リスfleur-de-lis )と呼ぶそうです。

 

アイリスはギリシャ語で「虹」という意味だとか。

花色が美しく色数も豊富なことから、

また、ギリシャ神話の虹の女神イリスに由来して名づけられたそうですね。

 

イリスの故事から与えられた花言葉は、「恋の使者」「堂々たる美しさ」

神話の中のイリスは、虹を渡って良い知らせを運ぶ神々の使者でした。

 

ギリシャ人やローマ人もお肌のためや健康のために、

バスタイムに活用するなど、様々な方法でアイリスを生活に使っていたんですよね。

 

もともとのルーツはアジアの花ですが、伝来したトスカーナ地方で自然に繁殖したのち、フィレンツェ市のシンボルとなり、「フィレンツェの百合」の別称を持つほど愛され、市の紋章にも使われるようになった、という歴史があります。

長くフィレンツェの人々に愛されてきた花なんですね。

ちなみに香りってどんな感じなんでしょう?

 

はい、アイリスの花はしっとりとした土のようなアーシーな雰囲気を持つ香りです。

どっしりと地に足をつけたいときに心を落ち着けてくれながら、

同時に凛とした華やかさも持つフローラルです。

 

お花の香りの中でもちょっと珍しい雰囲気を持っていそうですね。

 

はい、色でいうとパープル、紫を想起させるようなイメージで、

女性的な品と男性的な包容力を合わせもつ香りなので、

ちょっとミステリアスな雰囲気をまといたいときや、

男性が色気を醸し出したいときにもおすすすめな香りです。

 

お〜、それはとても魅力的なイメージですね。

 

はい、またアイリスは精神のバランスを整え、心を開放するとか、

想像力や直感力を刺激し強める働きがあるとされますので、

何かモノをつくるクリエイターの方やアイデアが欲しい

というタイミングにも良いかもしれませんね。

 

はい、私も考えに煮詰まったときにアイリスの香り、ぜひ使ってみたいと思います。

 

日本で手に入れるなら、サンタ・マリア・ノヴェッラのフレグランスで、

そのままのタイトル「アイリス」というシンプルなシングルフローラルの香りもありますし、

シャネルの最新フレグランス「ガブリエル」にもアイリスの香りが特徴的に使われています。

 

そんな最新の香水にも入ってるんですね?

 

はい、シャネルはシャネルの香水のためだけの大きな畑をフランスのグラースに持っているのですが、フィレンツェ近郊から持ち帰られたアイリス パリダの球根を何年もかけて乾燥させ、雑味の少ないアイリスの香りをつくり出して使っているそうです。

 

それは、なかなかすごいですね。

「ガブリエル」という商品名にもなっている名前はシャネルの本名のことで、新しい時代をつくっていく先進的な女性を象徴する「新時代の香り」がテーマだそうですね。

 

はい「ガブリエル」は、シャネルが愛したジャスミンやチュベローズなどの白い花々を中心に、ルミナス、光を放つような外に向かって溢れ出るようなポジティブさのある香りです。

そこに秘められた他では手に入らないアイリスの香りが、ブランドのアイデンティティの輪郭を際立たせてくれる要素として大切に使われているんですね。

 

この香り、どんなふうにアイリスが効いているのか、とても気になりますね。

 

クラシカルなシングルフローラルの「アイリス」

そして現代的な「ガブリエル」

ぜひ嗅ぎ比べてフィレンツェの残り香をフレグランスの中から

嗅ぎ取ってもらえたら嬉しいです。

 

今回も興味深いお話をありがとうございました。

 

 

ありがとうございました!

 

 

 

 

 

 

 

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