CHANEL N.5の秘密

こんにちは、調香師/ブランディング・ディレクターの千代です。

 

ナビゲーターの藤谷です。実はなんと!今回がこのPodcast最終回だとか!

(※ WEBラジオPodcast「調香師Chiyoの記憶に残る女になる〜香り×メイクでオーラを放つ方法」聴き方はこちらから。いつでもお好きなタイミングでスマホ&PC(I tunes)でお聴きいただけます。

※ こちらのブログ記事はPodcastを聴くことができない方のために、収録内容を書き起こしていますので、ご自身のペースでどうぞごゆっくりお読みください^^)

 

そうなんですよ、今まで約半年間、毎回お聴きくださったリスナーの皆様、

お付き合い本当にありがとうございました!

(2018年7月頃までは、いつでも過去放送回をお聴きいただけます)

 

私も毎回、香りやメイクについての興味深いお話を一緒にさせていただけて、

とっても楽しかったです。ありがとうございます!

さて、最終回の第24回めはCHANEL N.5がテーマなんですよね。

 

はい、世界一有名な香水の代名詞的存在、

N.5をテーマにお話をさせていただきます。

 

本日もよろしくお願いします!

 

まず最初にN.5の生まれた時代背景からお話していきますね。

 

1910年代、当時多くの女性はコルセットを身につけ、

満開のバラの花のような過剰なまでの装飾のついた帽子をかぶっていました。

その上バラの花以上に匂う香水をつけていたそうですね。

 

ココ・シャネルは自分のオリジナル香水を現代芸術の一環として、

そして抽象的な作品として作り上げたいと願っていました。

多くの女性がつけている香水には…ミステリアスなところが無い。

女性は花ではないのよ。なぜ花の香りをさせなければならないの?

 

私はローズが好きだし、ローズの香りは美しいけれど、

女性がまるでローズそのもののように香る必要などない。

女性は女性本来の香りを漂わせているべき。花のようではなくて。」

と、きっぱりと言ったそうです。

 

なるほど、たしかに女性は花そのものである必要はないですもんね。

でも、女性本来の香りって一体どんなイメージだったんでしょうね?

 

とても興味深いですよね。仕上がった香りについては後ほど詳しく解説しますが、

ここでもうひとつ知っておくべき事実があります。

ココが思い描いていた策はもうひとつありました。

それは育ちのいい良家の子女がつける香水と、

男性を誘惑する女性がつける香水との区別を完全になくすことでした。

 

 両者には区別があったんですね?!

 

はい、19世紀に貴族の中で流行していたムスク、ジャスミン、チュべローズといった

濃厚でいかにも気だるげな香水は、20世紀になるとたったひとつのイメージと結びつけられました。

それは《オドゥール ディ フェミナ(女の香り)》と呼ばれ、

娼婦や裏社交界の女ドゥミモンデーヌがつけるものと認識されていました。

 

濃厚な香りは娼婦の香り、だったんですね。

 

一方で、家柄のよい女性はローズやスミレなどの一種類の花の香りを表現した、

シンプルなシングルフローラルの香りを身につけていたそうですね。

 

はい、ココは自身のメゾンを起業する以前より、エチエンヌ・バルサンという将校の愛人として暮らしていた時、女性の香水選びが人の官能性を表現する上でどれほど大切かを学びました。

 

当時出会ったバルサンの愛人の、女優であり高級娼婦であったココの尊敬する女性、エミリエンヌからはむせかえるようなムスクの残り香はせず、かといって生娘ぶった控え目なスミレの香りもしませんでした。

エミリエンヌはセクシーで美しかったけれど、香水は軽めで、

いつも温かみのある素肌と洗いたての髪の香りを漂わせていました。

 

“清潔でありながら、同時に官能的な香り”

ココはその組み合わせに心奪われたんですね。

たしかに女性が官能的であってはならないとか、

性そのものが汚らわしいという考えもちょっと違いますしね。

 

コルセットが多用されていた1910年代のファッションに対して抱いていた

「どうして女は窮屈な服装に耐えなければならないのか」という疑問に

みずから立ち向かい、次々と新しい時代を生きる女性のためのスタイルを築いていったココ・シャネル。

彼女ならではの発想で、ステレオタイプな身分による区別を脱ぎ捨て、

現代的で優雅かつ官能的であるとはどういうことかを示す見本を、

自身の代表作となる香水によっても示したんですね。

 

 

N.5の香りのインスピレーションは、調香師エルネスト・ボーが

兵役時代に見た北欧ロシアの湖から得たといわれます。

そこは晩春ともなると、真夜中でも太陽が輝く白夜の地であった。

一帯には湖が点在し、その湖畔には美しい花が咲き乱れ、あたり一面に馥郁たる香りが立ち込め、それはまさに幻想的な辺境の地であった。

と彼は語っています。

 

エルネスト・ボー(調香師)

 

ココは彼に出会ったとき、「調香師ですら嫉妬したくなるような香水」

を創るよう依頼しました。

ココはN.5を他の調香師が真似るのは、どのくらい簡単なことか彼に尋ねました。

すると彼は「処方の秘密は保たれますが、ある程度の出来栄えの模倣品が創作されない保証はないでしょう」と言ったそうです。

 

香水ってそういうものなんですね?!

どうにかしてその処方が真似されないような方法は、何かないんでしょうか?

 

はい、そこで調香師ボーが提案した唯一の答えは

「あまりにも高価で模倣できない処方を創ること」

するとココは「手に入る最もすばらしい素材を使って構わない」と言ったそうです。

 

なるほど!そこまでしてお金と手間をかけて開発された香りだったんですね。

 

はい、すごい思い入れですよね。

 

それからボーは手持ちの高級素材をふんだんに用い、

最後にいくつかのアルデハイドを加えて、その豊潤な香りすべてを少しだけ浮き立たせ、

いままでにない新しい香りを創作し、北欧での思い出を再現したんだそうです。

 

N.5に含まれる重要な素材をご紹介しますね。

 

まず、トップノートのコモロ産イランイラン。

この香り、嗅いでにてどんな印象を持ちましたか?

 

なんだかエキゾチックな雰囲気を感じる香りですね。

 

このエキゾチックな樹木に咲く花からは、非常に多様な香りを感じとることができます。ジャスミンのようなフローラルにも、スパイシーにも感じられるその複雑な香りは、それ自体がひとつの香水のようでもあります。

またイランイランは、催淫効果もあると言われ全体の香りに妖艶さとニュアンスをもたらします。

 

次にミドルノートのグラース産ジャスミン。

 

トップのフレッシュさが次第に変化してゆき、フローラルでフルーティな、力強く官能的なジャスミンのノートへ移り変わります。

とりわけグラース産ジャスミンは、ジャスミンの中で最も贅沢で深みがあり、香水に使用される最高峰の「黄金のスタンダード」とも呼ばれます。

 

その他に花々の女王・ローズ、素肌のような温かみのあるヴァニラ、天鵞絨のような温かみのある白檀(サンダルウッド)…こだわりにこだわった天然素材がふんだんにつかわれています。

 

そしてN.5最大のキーとなる香料は、

当時としては考えられない量を配合されたアルデヒドと呼ばれる合成香料でした。

 

アルデヒド、ってはじめて聞きますが一体どんな香りなんでしょう?!

 

はい、ココの求める花の香りではないモダンな香水を創作するため、

そして香りの拡散力を格段に上げるために、このアルデヒドを効果的に用いました。

アルデヒドは例えると、イチゴの味を引き立てるために一滴だけ加えるレモンの絞り汁のような役割をする香料です。

 

グンと全体にインパクトが出る…そんな使い方をするわけですね。

 

実はアルデヒドとは、現代の商品でもシャンプーや制汗剤、食器用洗剤や部屋の芳香剤にも含まれ「清潔だ」という印象を与えるポピュラーな香りなのです。

しかし1910年に香水に使用する許可が下りたばかりのアルデヒドはまだ新しい成分で、調香師にとっても恐る恐る微量を使用する程度のものでした。

 

当時はかなり新しい素材だったんですね。

 

アルデヒドにはたくさんの種類があり香りもそれぞれ異なります。

N.5に主に使われるAldC-12は単独で嗅ぐと、日光を浴びた洗いたての洗濯物のような香りがします。

 

へ〜、そんな匂いなんですね。

 

また科学者達は、アルデヒドには三叉(さんさ)神経を刺激する作用があると提唱しています。

それは「熱い‐冷たい」、「快‐不快」を鼻が感じる方法であり、嗅覚を満足させるための基本の刺激です。

香水に含まれるアルデヒドはその中でも、ピリッとした爽やかさや刺激的なきらめきを持ち、微かにスリリングでもあります。

 

N.5をつけた時に、冷えたシャンパンのはじける泡のような感覚がするのももしかして、アルデヒドの効果なんでしょうか。

 

まさにそうです!その感覚をシャンパンではなく、もしかしたら当時は「新鮮な冷たい空気を吸ったときの気分」と形容したかもしれません。

実際に現代の科学者が分析したところ、標高の高い草原地帯や、強風の吹きつける極地のツンドラに降る雪には、他の地域の雪と比べて時に十倍もの濃度のアルデヒドが含まれることがわかったのです。

 

調香師エルネスト・ボーには当時から既に、

その事実を嗅ぎわけることができたのかもしれませんね。

また、そんな新しい素材を進んで取り入れる意欲も、彼の優れた才能の一つであり、

N.5が飛び抜けて印象的な香りになったゆえんかもしれません。

 

そして伝説によれば、N.5の処方はボーの不注意な助手が彼の指示を間違って理解し、なんと要求する10倍の濃度のアルデヒドを入れてしまったというのです。

 

10倍もですか!そんな個性の強そうな素材が10倍も!!

香りとして大丈夫だったんでしょうか?

 

ね、そう思いますよね!

常識的にはほんの少ししか使わないものを、あえてたくさん使う…かなり勇気がいりますし、普通なら作り直すでしょう。

でもそれが偶然とはいえ、あえてそのまま使用したことで新しい香りが誕生する一因になったというのは奇跡的なことですよね。

 

もし助手が濃度を間違えたのだという伝説が本当なら、

シャネルN.5は幸運な展開を招いたことになりますね。

 

この官能的なフローラルと禁欲的なアルデヒドの本質的な対比こそ、

シャネルN.5の秘密のひとつであり、この香水の有名な功績のひとつなのです。

それまでにほぼなかった香りのタイプ、のちにアルデハイディック・フローラルと呼ばれる香水の香調が続々と生まれたのは間違いなくN.5の功績です。

※ N.5の伝説には諸説あり、アルデハイドを効かせた香水はそれ以前にもあった、という説もあります

 

道なき道をつくりあげ、新しいことに果敢にチャレンジしたり、トライしつづけていくことで、シャネルのブランドは香水と共に成長していったんですね。

 

これからの時代も、まさにシャネルのような開拓精神をもった女性はどんどんと輝いていける時代だと思います。

 

「香水をつけない女に未来はない」

とシャネルは言っています。

 

言葉の意味としては香水をつけないで外出するのは、化粧をしない素顔のまま出かけるのと同じ。

女性なら、あなたの印象や雰囲気を決定づける香りにまで当たり前のように気をつかいなさい、ということになりますね。

 

そう、あなたのオーラは香水などの細部に気遣うほどに磨かれていきますよ

ということだと私は思います。

 

見えないけれど確実にあなたの印象の一部になり、

そして自信までも与えてくれるフレグランス。

そして、あなたの表情をより豊かに彩ってくれるメイク。

 

どちらもあなたのやさしい味方です。

ぜひ、女性ならではのツールを使いこなして、

さらなるあなたらしさを引き出していけますように…!

 

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