光と闇の統合

調香師ChiyoのフレグランスブランドAblxs (アブラクサス)という言葉は、もともと“光と闇 両方の要素を持つ神の名前”から由来しています。

そこから転じて、「あなたの中にある多様性を認め、自由に表現するための香り」がテーマになっています。

この間新しく入ってくれたAblxsの店舗スタッフから、これって正確には「多面性」なのではないでしょうか?というツッコミをいただきまして!

そう、日本語では普通は「多面性」が正解なんだということは、ちゃんと理解はしています。
なんだけど、「面」ってサイコロの面みたいに、転がすと違う数が出る、違う顔が出る、怪人百面相みたいにコロコロ姿を変えるようなイメージなんです(あくまでも私にとっては)。

それに対し、「様」(よう)という言葉は、様子が自然とグラデーションのように変わっていく、昼の時間からいつの間にか夕陽が出て沈んでいく、月の満ち欠けもしかり…繰り返すリズムの中で変化していく「様」という言葉の方がしっくりくる、美しいな、と思ってその言葉を使わせていただいています。

また、世の中では「世界の人の多様性を認めよう」みたいな動きがあると思うのですが、他の人を優先したりする割に、自分には完璧を求めがちというか「自分の中にも多様性があってもいいじゃないか!」もっと緩やかにいこうよ、というメッセージも込めています。

今日、なぜこれについて書こうかと思い立ったのには訳があります。

「ダンサー イン Paris」という映画を見ました。
パリ・オペラ座バレエでエトワールを目指す主人公。しかし、舞台裏で恋人の裏切りを目撃し心乱れ、ステージ上で転び足首を痛めてしまう。医師からはもう踊れなくなる可能性を告げられ…。新たな道を模索する最中に出会う、コンテンポラリーダンスや、新しい仲間たち。

作中に「バレエは天上界の完璧な踊り。コンテンポラリーはトライバル(部族的)で大地を感じる踊り」と表されるシーンが私にはとても印象的でした。

天界のような夢想的な美しさも、血肉や魂の叫びを感じる野蛮さも、どちらも同じ人間から表出するもので、どちらが上とか下という区別はないということ。それを気づかせてもらい、改めて私の大切にしている価値観について伝えておきたいと思い立った訳です。

あなたの中にはどんな光がありますか?
あなたの中にはどんな闇がありますか?

どちらも尊いあなたの一部。
怖がらずに、香りや星の手助けを借りて、私と一緒に表現していく練習をしてみませんか?

【書き手】
Chiyo/月詠み調香師
https://ablxs-fragrance.com
https://www.instagram.com/ablxs_official/
1985年東京生まれ。フレグランス・化粧品に特化した美容ライター業、百貨店オーガニック化粧品ブランドのセールスマネジャーを経て調香師になるという、女性の美・悩みにまつわる様々な経験を持ち、クライアントに最適な製品を提案するカウンセリング力も強み。
2012年にブランド創業。2020年に(株)アブラクサス創立。香りの文化を広めるべく、一般の方へ向けた調香の基礎を学べるクラスも展開中。20歳のころより学びを深めてきた占星術・タロット研究の知識を取り入れ、今の心の状態に寄り添う香りやセッションを提供している。

目次